2013年度ACEQ大会参加報告 (11/2)
報告(関未玲、仲村愛) 2013年10月26日(土)に、韓国ソウルの成均館大学にてACEQの年次コロックが開催されました。例年にない10月末の大型台風が日本に接近しており出発時は心配しておりましたが、雨の激しく降る日本から韓国に降り立つと、紅葉美しい秋晴れが広がっておりました。
大会は11時過ぎに始まり、ACEQ現会長のLee Ji-soon先生(成均館大学)が開会の辞を述べられた後、午前中はBenoit Doyon-Gosselin先生(ラヴァル大学)からアカディア文学についての発表があり、その概要について知る大きな機会を得ました。各セッションは発表に続き、問題提起者からのコメント及び議論を経て、会場からの質疑応答へ移るという大変濃密な構成になっていました。
昼食時はキンパと呼ばれる韓国の伝統的な海苔巻きを用意して下さいました。素晴らしい秋晴れに恵まれたので、屋上庭園にてピクニック形式でキンパを頂き、眼下に広がる大学路(テハンノ)を一望しながら、歓談致しました。ACEQの総会(次期会長にLee In-sook先生(漢陽大学)が選出されました)が行われたあと、引き続きLee Bong-jie先生(培材大学)からジャック・ゴドブーの小説分析について発表(韓国語)がありました。次にAJEQの関会員からキム・チュイのデビュー作である『小川』(日本ではAJEQの山出会員がすでに翻訳されております)について、彼女の文体等に関する発表がありました。断片からなる、時空間を横断したキム・チュイの小説の特徴を、意図的な欠落によって削ぎ落とされた文体として「soustraction」という言葉に集約して論じられていました。会場からはアラン・バデューとの関連についての指摘もあり、質疑応答は活気に満ちたものとなりました。引き続きAJEQの仲村会員より、1980年代から今日に至るまで州政府が展開してきた統合政策であるインターカルチュラリズム政策に関する発表がありました。ケベック州の統合政策の問題点を、主に以下の三点に絞り、浮彫りにした分析でした。第一に同政策はインターカルチュラリズム理念を内包しているにも拘わらず、州政府は同用語を用いることを慎重に避けている、第二にケベック外への視点が欠如している、第三にケベック内の移民以外の集団との統合に関してはほとんど黙殺されている点が指摘されました。今回の大会は全般的に文学について論じた発表が多かったなか、仲村会員からの政策に関する発表は会場からの質問も多く、Doyon-Gosselin先生も議論に参加されケベックの現況についてお話しされました。休憩をはさんだ後は、先日行われたAJEQの大会にも参加されたShin Jung-a先生(韓国外国語大学)よりワジ・ムアワッドの小説を、意味論分析の視点から分析した発表(韓国語)がありました。最後はBae Jin-ah先生によるフランス語教育における丁寧語についての詳細な発表がありました。初心者にとっていかに条件法などを使った丁寧な表現が難しく、コミュニケーションの際に問題を引き起こしているかについて、統計を踏まえながら分析されていました。特に初心者を対象としたフランス語教育に携わる者にとっては、示唆に富む発表でした。夜は伝統的な韓国料理ビビンバをご馳走頂き、その後もお店をはしごして、交流の深まる一日となりました。
Lee Ji-soon現会長とHan Daekyun前会長からは、何度もAJEQ前会長の小畑先生と現会長である小倉会長についてお尋ねになられ、今回AJEQの参加者が大変温かく歓迎して頂いたのも、一重にAJEQ設立に携わられた先生方、及び会員の皆様のお力があってのことと改めて感じ入ったしだいです。今後も日韓の友好に満ちた知的交流が深まるよう、努力してゆきたいと思います。コロックの前段階から当日に至るまで、Han Yongtaek先生を始めACEQの方々には様々な形でおもてなしをして頂きました。改めて感謝申し上げます。
以上
参考:写真とプログラムは、以下の資料集ブログをご覧ください:
http://ajeq.blog.so-net.ne.jp/2013-11-03-----------------------------------------------------------------------
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