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日本ケベック学会(日本でのケベック・フランコフォニー等に関する学術研究・芸術文化交流を振興・推進する学会)の公式ブログ

AJEQ全国大会の「大会報告」がアップされました

AJEQ2009年度全国大会の「大会報告」(10/17)

大会報告 
 初のAJEQ全国大会は"大成功"に終了しました。自画自賛ではありません。どのセッションも、十分に練り上げられた密度の濃い内容でした。これは、会員諸氏および招聘研究者達のケベック研究に対する熱意の賜に他なりません。フロアからの活気ある発言も目立ちました。他方、学生諸君や裏方の献身的ご協力無しに、この種の大会の成功はあり得ません。あらためて厚く御礼を申しあげます。当日、非会員を含めた出席総数は73名。総じて、「創造的イマジネーション」に満ちた一日でした。(大会運営委員長・竹中 豊)

研究報告
 まず、友武栄理子氏(関西学院大学)による「ヌーヴェル・フランスの遺産、ケベックの料理文化」と題する報告では、フランス領時代にフランス人が本土から持ち込んだ料理に、先住民の知恵を取り入れ、ケベック固有の料理を作りだしていった様子が紹介された。現在では、ケベックでおなじみのプティーン、トルティエール、パテシノワなどの郷土料理が写真で紹介され、聴衆の興味と食欲をそそった。
 次に、フランス語で報告されたGélinas-Chebat氏(UQAM)による「ケベックにおけるフランス語の話し言葉」では、同氏がケベック・フランス語の音韻的、形態・統語論的な特徴を数々の例を紹介しつつ、わかりやすく分析した。両報告とも、その後、活発な質疑応答があり、大盛況に終わった。(司会・矢頭典枝)

アンドレ・ジラール氏特別講演報告
 アンドレ・ジラール氏はまずケベックにおける俳句の受容の歴史を1922年から現在までたどっていった。フェリックス・アントワーヌ・サヴァールやアルフォンソ・ピシェなどの名前があげられ、ケベックの作家や詩人と俳句とのつながりも浮き彫りにされていった。講演の後半ではアンドレ・デュエム氏との共著Marcher le silenceの一部がジラール氏自身によって解説とともに朗読された。また最後にaméricanitéやamérindianitéと俳句との関係に言及されたのが大変興味深かった。その後活発な質疑応答がなされ、講演は予定時間を10分オーバーして終了した。(司会・寺家村博)

ガブリエル・ロワ生誕100周年記念企画
 カナダを代表する作家ガブリエル・ロワ生誕100周年を記念して、三本の研究発表が行われた。韓国ケベック学会からも二名の研究者が参加してくれた。まず、LEE Ji-soon (Sungkyunkwan大学)教授が Le rapport mère-fille dans les écrits autobiographiques de Gabrielle Roy et Pak Wans と題する発表を、次に、OH Jung-Sook教授(Kyung Hee大学)が L’art du récit d' enfance dans La Détresse et l’enchantement de Gabrielle Roy と題する発表を行った。どちらもロワ作品における自伝的要素の重要性について論じたものであった。最後に、本年ケベックの女性作家に関する研究を出版した山出裕子会員(お茶の水女子大学)が L'influence des œuvres de Gabrielle Roy sur la littérature québécoise contemporaine と題する発表を行い、ロワ作品と現代女性作家との関係を論じた。いずれの発表も興味深いもので、その後、会場を交えて、活発な質疑応答がなされた。(司会・小畑精和)

シンポジウム 「ライシテと"多文化主義"-ケベックとフランスからの問いかけ」
 大変充実したシンポジウムであったというのが、司会を担当した者としての率直な感想である。工藤庸子氏は、ケベックにおける「ライシテ」が、多元的パラダイムに依拠した多文化主義との緊張関係の中で統合的な社会モデルを志向する「インターカルチュラリズム」を軸として展開され、そこからフランスとは異なる施策が出てきていると論じた。伊達聖伸氏は、それを受けて、ケベックの「倫理・宗教文化」教育が現在どのように構想され実施されているかを説明し、最後に氏の問題意識に結びつけた。竹中豊氏は、ケベックの「開かれたライシテ」のよって来るところを歴史的・社会的文脈と伝統から解明しようと試みた。含蓄のある発表だった。討論者の飯笹佐代子氏は、オーストラリアの事例も引きつつ、発表者たちの視点をさらに切り開き、問題の在り処に示唆に富んだ光を投げかけた。会場からも、熱心で質の高い質問があった。(司会・立花英裕)

学会誌創刊号案内
 『ケベック研究』創刊号が9月15日に完成。「特別号」という位置づけで、ケベック学会設立の趣旨やケベック学の射程を広く紹介する内容として編集した。計116ページ。制作費27万円のうち、ケベック州政府在日事務所から20万円、また国際ケベック学会からも広告料という名目で2万円の助成をいただいた。この場を借りてお礼を申し上げたい。現在、寄贈先を調査中。次号からは正式に編集委員会を発足させ、投稿制を導入する。投稿規程の詳細は学会誌巻末を参照されたい。(学会誌担当理事・小倉和子)

参考:
大会プログラム:http://ajeq.blog26.fc2.com/blog-entry-17.html
大会概要・写真:http://ajeq.blog26.fc2.com/blog-entry-18.html
大会等の写真集:http://ajeq.blog.so-net.ne.jp/2009-10-03
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