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日本ケベック学会(日本でのケベック・フランコフォニー等に関する学術研究・芸術文化交流を振興・推進する学会)の公式ブログ

立花副会長の「アメリカ地域フランコフォン功労章」を祝う会

立花英裕副会長「アメリカ地域フランコフォン功労章」Ordre des francophones d'Amériqueを祝う会の報告(12/26)

すでにご存じの方も多いと思いますが、立花英裕AJEQ副会長が2009年9月に「アメリカ地域フランコフォン功労章」Ordre des francophones d'Amérique を受章されました。
先生の受章を祝うために、12月19日(土)に9名のAJEQ会員が集まり、先生の話をうかがい、またワインを片手に懇談し、楽しいひと時を過ごしました。写真をご覧ください。

この章は、アメリカ地域においてフランス語の普及に貢献した人物の功績を讃えることを目的として、ケベック、その他のカナダ、その他のアメリカ地域、その他の大陸の部門から毎年それぞれ1、2名をケベック州政府「フランス語高等局」が表彰するものです。詳細は以下のサイトをご覧ください。
http://www.cslf.gouv.qc.ca/prix-et-distinctions/ordre-des-francophones-damerique/
(文責:小畑)

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(写真提供:Obata)
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フランコフォニー・シンポジウム(12/13)の開催趣旨

フランコフォニー・シンポジウムの開催趣旨(12/18)

「フランコフォニーを発見しよう」開催趣旨
立花英裕

 このシンポジムの開催趣旨は、三つあるかと思います。一つは、フランス語圏の国々についての理解を深めることです。
 フランス語が話されている国や地域は、日本に入ってくる情報から想像されるよりはるかに大きな広がりをもっています。世界でフランス語を公用語としている国は、32か国あります。この中にはフランス語が広く話されているにもかかわらず、公用語にはなっていない国は含まれていません。その代表的な国として、今回参加したアルジェリアがあります。そうした国や地域を加えると、更にフランコフォニーの世界は広がります。フランコフォニーという語は、先頭の文字Fを大文字でかくときと、小文字で書くときがあります。いま述べたような意味でのフランコフォニーは小文字で書きます。
 フランコフォニーの最初の文字Fが大文字になるとき、多くの場合、フランコフォニー国際機構を指します。この国際組織は、フランス語を共有し、かつ一定の価値観に賛同する国や地域が加盟しています。この組織の一つの特徴は、必ずしも国家でなくて、州や県、あるいは地域でも承認されれば加盟できることです。たとえば、このシンポジムに参加しているカナダのケベック州は、設立当初から参加しています。オブザーバーとして参加している地域もあります。2008年の時点で、フランコフォニー国際機構の加盟数は56の国と州を数えます。オブザーバーの数は14。今回のシンポジウムにルーマニアも参加している理由がこれで分かるでしょう。ルーマニアは、フランコフォニー国際機構の加盟国なのです。
 これらの国は、当然、国際連合の加盟国でもあります。日本がこれから世界の中でどのような役割を果たすべきかを考えたとき、また、国際的な場で広く信頼を得る国になるためには、フランコフォニー国際機構加盟国との交流を深めていくことが実はとても重要な課題になっています。
 このシンポジムの趣旨として、第二にあげたいことは言語の問題です。一般的には、19世紀から20世紀にかけて、言語は特定の民族や国家に結びつけて考えられがちでした。しかし、今日では、たとえば日本語でも、外国の人が日本語で小説を書き、それが読まれる時代になっています。フランス語の場合、この現象がはるかに早くから、また広範に進行しているわけです。このシンポジムでは、フランス語がフランスだけのものではないという認識を新たにしていきます。それは決してフランスを過少に評価することではありません。むしろ逆でしょう。フランス語は、ヨーロッパの、そしてまたアフリカやアメリカ大陸の他のフランコフォンの国や地域の言葉でもあるのです。フランス語は、そこでフランスとは違った展開を示しています。地域の社会や文化的状況と結びついて、フランス語は新たな生を生きているのです。
 このシンポジムを企画した三番目の理由は、いまのことと無関係ではありませんが、世界の多様性についての認識を深めていくことです。「多様性」とは、単に世界には様々な文化や民族があること、そして文化や民族の違いを尊重しなければならないということだけではありません。そこには、歴史や文明に関わる根本的な見方が含まれています。一言でいえば、19世紀以来の、あるいは啓蒙主義以来の進歩主義的歴史観が現在行き詰まっているという全般的な状況認識があります。より具体的にいえば、環境問題やエネルギーの枯渇の問題などに現れている、人類の量的な拡大の限界です。世界の多様性への認識を深めるとは、無限の拡大に向けて進んでいくような歴史観とは異なる道を探索することでもあるのです。少なくとも、私はそのように考えています。そして、その手がかりの一つとして、フランコフォニーの国々に関心をむけていこうということです。シンポジムには、10の国と地域が参加しますが、3つの大陸から聞こえてくる多様な声に耳を傾ける機会にしたいものです。

主催:日本におけるフランコフォニー推進会議
共催:日本ケベック学会(AJEQ)、日本フランス語教育学会(SJDF)、アルジェリア大使館、カナダ大使館、カメルーン大使館、ケベック州政府在日事務所、ジブティ共和国大使館、スイス大使館、ハイチ大使館、フランス大使館、ブルキナファソ大使館、ルーマニア大使館

フランコフォニー・シンポジウムの詳細や写真は以下を参照:
AJEQブログ:http://ajeq.blog26.fc2.com/blog-entry-21.html
AJEQ資料集:http://ajeq.blog.so-net.ne.jp/2009-12-13

フランコフォニー・シンポジウムが開催されました

フランス語圏大使館合同シンポジウム
「フランコフォニーを発見しよう」(12/13)

日時:2009年12月13日(日)13:30-18:00
会場:早稲田大学総合学術情報センター国際会議場・第2会議室
(以下敬称略)
立花英裕(早稲田大学)「フランコフォニーの概要」
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司会役:高瀬智子(明大)、小松祐子(筑波大)、粕谷祐己(金沢大)
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ハイチ代表、カナダ代表、ケベック代表(スザンヌ・エティエ代表)
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満員の会場風景
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主催:日本におけるフランコフォニー推進会議
共催:日本ケベック学会(AJEQ)、日本フランス語教育学会(SJDF)、ケベック州政府在日事務所および9大使館
協力:TV3Monde(フランス語国際放送局)

プログラムと他の写真は以下の「AJEQ資料集」のブログ参照:
http://ajeq.blog.so-net.ne.jp/2009-12-13
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韓国ケベック学会参加メンバーの報告

韓国ケベック学会報告と写真(12/5)

韓国ケベック学会報告 
加納由起子/山出裕子

 2009年10月31日にコリア大学にて開催された第九回韓国ケベック学会「Traduction, Cinéma et Gabrielle Roy」(翻訳、映画、ガブリエル・ロワ)に、日本ケベック学会理事加納由起子、山出裕子が出席し、研究発表を行った。学会は午後一時半に始まり、六時に終わった。コーヒーブレイクをはさんで、六人の発表とそれぞれについてのコメンテーターとの討論があり、充実した内容だった。周到に準備された広い会場にはケベック文学の翻訳者、研究者、学生たちが四十人ほど見られ、リラックスした雰囲気ながら、皆最初から最後まで熱心に発表と討論に聞き入り、ノートをとっていた。

 同学会は、韓国ケベック学会の会長であるDae-Kyun HAN教授による、挨拶をかねたケベック韻文文学の翻訳に関する講演で始まった。その後、二つのセッションに分かれた研究発表が行われたが、第一セッションは、翻訳学、女性文学、シネマについての研究発表、第二セッションは、ガブリエル・ロワについての研究発表であった。

 第一セッションでは、まずはじめに、加納理事による「ケベック女性文学の日本語訳について。その経緯、特徴、概観」と題された発表があった。加納理事は、ケベック文学における女性を主人公とした作品の先駆けとして、1932年に男性作家であるルイ・エモンの『マリア・シャプドレーヌ』が初邦訳されていることに触れ、その後、2002年に出版された『椿』までのケベック女性文学の日本における翻訳の経緯を紹介した。加納理事は七十年あまりの歴史を三つの時期に分け、それぞれの時期の翻訳状況の特徴を述べた。ケベック文学において女性を主人公とした作品の翻訳の歴史は、まず『マリア・シャプドレーヌ』が唯一の典拠であった長い時代の後、女性作家によって書かれた女性文学作品が現れ始めたことについて紹介した。さらに、1970年代にアメリカとパリの出版動向に影響を受けたマリー・クレール・ブレとアンヌ・エベールの翻訳があったことについて触れた。そして1990年代には、英米のフェミニズムと同調した翻訳理論に刺激を受けた、英系カナダ文学の研究者によるブロサールの翻訳があった。同時にポスト・コロニアルと移民文学への関心がそこに加わるようになった。加納理事は、日本におけるケベック文学の紹介は、女性を主人公とした男性作家作品に始まり、その後、三度にわたって女性作家の発見を通して行われたと述べた。
 コメンテーターからは、1990年代の英系カナダ文学研究者の翻訳実践の意義について、質問を受けた。またデキュン教授から、何故『マリア・シャプドレーヌ』のみが長く唯一のケベック文学の代表であったのか、という質問を受けた。最初の質問については、「脱構築主義翻訳理論のケーススタディという立場を超えて、カナダ産フランス語文学の独自性が認められたという意義がある」と答え、次の質問には「マリア・シャプドレーヌは当時未曾有の国際的ベストセラーであったために、このように早い時期に二度翻訳されるに至ったものと思われる。また、1990年代までケベック文学は日本には言わば存在しないも等しかったので、当該小説の成功とケベックの日本における表象の間には、大きな関係はないと思われる」と答えた。また、ハングル語で、『マリア・シャプドレーヌ』および、『アガクック』の初翻訳が進行中であることを教えられた。

 続いて、中国の広東外国語大学のYirong Cheng教授による中国におけるケベックの韻文文学についての熱心な発表があった。チェン教授は中国におけるケベック詩の導入の歴史が浅いことを述べ、これからのグローバル社会にとっての詩文学の一般的必要性を述べた。

 続いて、山出理事の発表として「シェリー・サイモンの作品に見られる翻訳性とフェミニズム」と題する発表が行われた。この発表では、まず近年の翻訳学の傾向について紹介し、特にケベックにおける翻訳論という観点で、バイリンガリズムとともに、女性翻訳家の役割に注目している、シェリー・サイモンの翻訳理論作品の特徴について紹介した。
 まず、サイモンの代表的な著書であるGender in Translationに見られるフェミニスト翻訳理論の特徴について論じ、具体的な例として、ニコール・ブラッサールの作品であるL’amèr とフェミニスト翻訳家であるバーバラ・ゴダールによる同著書の英訳All Our Mothersを比較し、フェミニスト翻訳から生まれる創造性について論じた。また、サイモンの最近の著作であるTranslating Montrealにみられる、モントリオールの多言語、複数民族の文化から生まれる翻訳性の特徴について論じた。特にサイモンは、この著書において、英語とフランス語の間の言語的緊張感に注目しており、そのような緊張感から生まれるモントリオール文化の特徴が、サイモンの翻訳論のよりどころとなっていることを指摘した。また、サイモンは、この文化的特徴を、翻訳論を通して積極的に評価しており、モントリオール文化の混血性を翻訳することが、その文化の特徴であるとしていることを強調した。またその混血性は、サイモンの著作であるHybridité culturelleでも詳しく論じられており、これはケベックのバイリンガル翻訳家であり評論家でもある、サイモン自身のアイデンティティのよりどころにもなっているとの見解を示した。

 さらに、このセッションの最後の発表として、韓国の清洲大学のEun-Jin SIM教授によるケベックの映画と女性に関する発表が行われた。

 第二セッションは、2009年10月03日に行われた「日本ケベック学会2009年度全国大会」の際に、韓国より招聘された二人の研究者の発表のために当てられたものであった。ここでは、Sungkyounkwan 大学のJi-Soon LEE教授による、ロワの作品と韓国文学を比較した比較文学論の発表、Kyung Hee 大学のJung-Sook OH教授による、ロワの自伝文学についての発表が、先日、日本で行われた発表と、ほぼ同じ形で行われた。
(文責 山出裕子)

韓国ケベック学会の写真
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(写真提供:Kano)
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